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【食物アレルギーの患者数】2021.07.21

2020年4月1日より、特定原材料に準ずるものとしてアーモンドが追加され、クルミ、カシューナッツに続き、
ナッツ類では3品目となりました。(落花生は木の実類とは別に分類されてます)
気になったので、食物アレルギーの患者数について調べてみました。

引用文献
(1)食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書
即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査 独立行政法人国立病院機構相模原病院 院長 金田 悟郎
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/

(2)日本における食物アレルギー患者数の推計;疫学調査の現状と課題
   https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/67/6/67_767/_article/-char/ja/

(3)消費者庁 加工食品の食品アレルギー表示のハンドブック(令和3年3月)

【即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査】
○対象者(4,851名)は、
何らかの食物を摂取後60 分以内に症状が出現し、かつ医療機関を受診したもの

○調査結果
①年齢分布と男女比
年齢は中央値が2歳、最高齢は94 歳であった。
0歳で31.5%、1歳が18.0%、2歳が10.1%であり、2歳までに59.7%を占めた。
6歳までに80.5%、
11 歳までに90.7%、
18 歳までに95.5%を占めた → 18歳以上は、230名(4.5%)となる
男女比は3:2(男性2,897 名/女性1,954 名)で男性に多い傾向であったが、
年齢群別には異なり0歳群から7-17 歳群までは男性の割合が多く、
18 歳以上群では女性が多かった。



②原因食物
鶏卵  34.7%
牛乳  22.0%
小麦  10.6%  累計 67.2%
木の実  8.2%  (平成24年度調査では2%、平成27年度調査では3.3%)
 クルミ     62.9%
 カシューナッツ 20.6%
 アーモンド    5.3%
 ※マカデミアナッツ、カカオ、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ココナッツ、ペカンナッツ、クリの順で報告があった。
落花生  5.1%
果物類  4.5%
 キウィフルーツ 35.6%
 以下、バナナ、モモ、リンゴ、サクランボの順
魚卵類  4.0%
甲殻類  2.9%
そ ば  1.8%
大 豆  1.6%
魚 類  1.4%
その他  3.3%


③年齢別原因物質(各年齢群で5%以上を占める原因食物を示した)

 


0歳

1,530


1,2歳

1,364


3-6歳

1,013


7-17歳

714


18歳以上

230


鶏卵

55.3%

鶏卵
38.3%

牛乳
20.6%

鶏卵
16.4%

小麦
19.1%


牛乳
27.6%

牛乳
23.1%

鶏卵
18.9%

牛乳
15.7%

甲殻類
15.7%


小麦

12.2%

小麦
8.3%

木の実類
18.3%

木の実類
12.9%

魚類
10.0

 


木の実類
7.9%

小麦
10.8%

果物類
落花生
10.5%

果物類
8.7%

 


魚類

7.4%

落花生
10.7%

大豆
7.4%

小計


95.1%

85.0%

79.3%

66.0%

60.9%

年齢が上がるにつれて、上位5品目の割合が低下するということは、アレルギー原因食物の多様化が指摘されている。


④出現症状(どんな症状か)
a)分類
皮膚症状   86.6%
呼吸器症状  38.0%
粘膜症状   28.1%
消化器症状  27.1%
ショック症状 10.8%
年齢の中央値は3歳、平均8.3歳、全体の3/4が5歳以下。

b)ショック症状の原因食物
鶏 卵   23.9%
牛 乳   22.5%
小 麦   16.6%
木の実類  12.8%
落花生    7.3%
甲殻類    3.6%
果物類    2.9%
そ ば    2.7%
魚 卵    2.3%
魚 類    1.9%
大 豆    1.0%
その他    2.7%


⑤アレルギー表示に該当する原因物質の割合
a)即時型症例4,851名において
   特定原材料  7品目  77.0%    
   特定原材料等20品目を含めると 94.5%

 b)ショック症例524名において
   特定原材料  7品目  76.5%
   特定原材料等20品目を含めると 94.0%


⑥特筆
a)学童期の初発原因食物は引き続き果物類が多く、次いで甲殻類、木の実類が多かった。果物類はキウイフルーツ、バナナ、バラ科果物の頻度が上位を占めたが、これはPFAS(Pollen Food Allergy Syndrome:花粉食物アレルギー症候群)の患者増加に関連していると考えられた。

b)初発原因食物の頻度は世代によって大きく異なる。

c)平成29(2017)年調査により現行の食品表示法に基づくアレルギー食品表示の妥当性は支持されたが、クルミを筆頭に木の実類の即時型アレルギーの健康被害が大幅に増加していることが明らかになった。

d)果物について、EU、米国、CODEXでは、対象食物となっていない。

e)別の調査の考察では、アレルギー患者数は乳幼児期が最も多く、年齢があがるにつれて減少する(成人期では5.4%)。これは、耐性を獲得したことと、すでに食品を回避しているために即時型症状を起こさず、受診する者が減少するためと考えられる。

f)別の調査では、保護者の自己判断で食物アレルギーと考え、意図的に食品を除去していることが明らかになった。特定原材料等の表示が、過剰な食品の回避につながり、乳児期の離乳を過度に遅らせるなどの行為となることが危惧される。

アレルギー調査については複数ありますが、「自己申告」と「医師の判断」が混在していたり、症状が軽いために受診しないこともあり、厳密な患者数を調査するには限界があるようです。いずれにせよ、アレルギーを持つ人が増加していることは明らかです。気候変動により災害も増加していることから、非常時に彼らが必要とする食品をどのように提供するかは大きな課題です。
SDGsが流行ってますが、災害時の食事は、SDGsの目標1の5
「2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。」 に関係していると思います。

ナッツや果実には、食物アレルギー特定原材料に準ずるものが多くありますが、アレルゲンを含まない果実が原料のドライフルーツも複数あります。災害時はその保存性と栄養価が有用となるはずです。

災害時の食事については、当新着情報にてこれまでも取り上げておりますのでご参照下さい。


2016年9月1日掲載
非常時に備えドライフルーツを

2013年3月15日掲載
ローリングストック

また、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任 持続可能な消費と生産のパターンを確保する」ではフードロスについての目標が設定されています。

目標12の3 「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。」

ドライフルーツはその保存性の高さからフードロスに貢献する食品です。
フードロスについても過去に取り上げておりますので、是非ご一読下さい。
2014年7月24日掲載
「もったいない」をもういちど



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